エージェント・レイ‐狂人の島‐
船が島の港に差し掛かりつつある。

定期船が入港するのがやっとといった感じの、小さな港。

少し霧が出てきたのだろうか。

視界はあまりよくなかった。

定期船の乗務員達が、慌しく動き始める。

上陸の準備だろうか。

と。

「閑散としているな」

革ジャンの若い男性が呟いた。

よそから来た人にしてみれば、確かにそうかもしれない。

とにかくこの島は人が少ないのだ。

しかし、その男性が考えていたのは、私とは違う事だったらしい。

「港側に人がいない…舫い(もやい)を結ぶ人間すらいないのは妙じゃないか?」


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