エージェント・レイ‐狂人の島‐

「うぁぁあぁぁああぁっ！」

シバタの悲鳴が、井戸の闇へと飲み込まれる。

自らがナノマシンを混入させた井戸の中へ、シバタ自身が放り込まれた。

壁面に何の取っ掛かりもない井戸だ。

這い上がってくる事は不可能だろう。

井戸の中で頓死したのか、それとも自らが混入させたナノマシンによって彼も暴徒化したのか。

「どっちにせよ…悪党には似合いの末路だ…」

レイが身を起こし、息を荒くした。

「レイ！」

私は彼に駆け寄る。

「大丈夫？とりあえず腕の傷を…」

私はミニスカートを引き裂き、ライフルで撃たれたレイの左腕の傷を縛る。

止血くらいにはなる筈だ。

「いい、俺の事は構うな…それよりも早く脱出を…」

レイは言うが。

「いいから！」

私は彼の手当てを続ける。

…こんなにボロボロになってまで、任務を果たそうとしている。

少しでも、彼の役に立ちたかった。