そのコップは空(ソラ)だった。
【そのコップは空だった。】
目の前にいるのは
別人かもしれない
俺の知りすぎて知らないもの
『好きだ』と言った自分がバカだったのかもしれない
昨日の昨日まで二人して参考書を広げ
互いに問題を出し合っていたのは夢かもしれない
いや夢だ
全部が夢なんだ
泣け叫ぶ人々が周りを囲み
その中央で彼女は冷たく目をつぶっていた
まるで俺たちをあざけ笑うかのように
彼女が憎らしい…
だけど、何もせずその場に立ちすくんでいた自分が
もっと憎らしい…
その日
俺は大切なものを失い
自分さえも失った