そのコップは空(ソラ)だった。
「黒住くん…って凄いね。」
「へ?俺はべつに凄いことはしてねーべ。」
眠そうに答える彼。
私は続けて言う。
「凄いよ…。憧れる…。なんでもできちゃうんだから…。」
「お前、俺を買い被りすぎー。」
風が静かに吹く。
私は低い口調で言った。
「買い被ってないです。私は人が出来ることが…出来ないから…。」
私は自分が嫌だ。
不器用すぎる自分が嫌なんだ。
「なんで?お前頭良いじゃん。先生たちだってお前のこと優等生って誉め称えてんじゃん。」
彼は寝返りして私を見る。