そのコップは空(ソラ)だった。



私は家庭科室に寄ってから屋上に向かう。



「黒住君…!!」


私は彼の目の前に座り


紙コップの一つを差し出した。



「へ?」


ポカンとした口を開け、彼は受け取る。



私は糸で繋がれたもう一つの紙コップをギュッと持つ。




「糸電話…しよう?」


私は彼の顔を窺うと彼はニコッと笑った。


「おう!いいぜ♪」



春の匂いがするこの屋上で


ピンっと赤色の糸を張って


紙コップに耳を当てる。

< 146 / 258 >

この作品をシェア

pagetop