そのコップは空(ソラ)だった。
私は家庭科室に寄ってから屋上に向かう。
「黒住君…!!」
私は彼の目の前に座り
紙コップの一つを差し出した。
「へ?」
ポカンとした口を開け、彼は受け取る。
私は糸で繋がれたもう一つの紙コップをギュッと持つ。
「糸電話…しよう?」
私は彼の顔を窺うと彼はニコッと笑った。
「おう!いいぜ♪」
春の匂いがするこの屋上で
ピンっと赤色の糸を張って
紙コップに耳を当てる。
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