そのコップは空(ソラ)だった。
「別れよう。」
いかにもつくり笑いの杉浦が言う。
昼休み、屋上に呼び出されたと思ったらこれだ。
「なんでだよ?」
理由が分かってる。
でも、それを聞くっていうのが筋だ。
「あたしらあんまり合わないじゃん。
性格とか…なんかしら。」
きっぱり言えよ。
好きな人が出来たって。
「それ結構、今更じゃねぇ?」
"確かに"と彼女は笑う。
「良い奴がいるんだ。
そいつ、あたしの外見抜きで
あたしのこと好きでいてくれて
あたし、そいつのこと気に入った。」
まぁ、いいんじゃないのか?
世の中にはそういう奴がいて。
「硬派なんだよ、あいつ。」
へぇ、んな奴、お前の目の前に現れるわけねぇけどな。
「あたし、初恋しちゃった♪」
無邪気にはにかむ杉浦。
やっぱり俺との付き合いは"無"に近いものだったのか。