そのコップは空(ソラ)だった。
池田が教えてくれた
カラオケのルームナンバーの部屋に盗聴器をつける。
ここはいつも杉浦の浮気相手が予約するルーム。
でも、予約するのはバッティングセンターを出た後。
つまりその前に俺が隣のルームを予約して
彼らが来る前に彼らのルームに盗聴器を付ける。
これを考えたのは池田。
なんか本当のストーカーの領域に達してないか?
俺は隣のルームに戻った。
俺は何がしたいんだろう…?
杉浦の相手が本当に良い奴だったらどうすんだ?
何も考えずに行動しちまったから
今更どうこう考えても遅い。
「今日、何歌うー?」
杉浦の声がした。
奴らがルームに入って来た。
盗聴器はソファと壁の間に隠れている。
「じゃあ、いつものあの曲歌って?」
男の声がはっきり聞こえた。
たぶん男が盗聴器の前に座ったんだろう。
「おう!任しとけ!」
お前、好きな奴の前でも男口調なのかよ。
少しは猫かぶって甘い声とか出せよ。
まぁ、"素"っていうのは長所だと思うけどさ…。