そのコップは空(ソラ)だった。



それでも彼女は何も言わなかった。


だけど、理性が戻った時にはいつも


彼女の顔は涙でぐしゃぐしゃになっていた。




「ごめん。」


俺はギュッと抱きしめ後悔する。



そして



「ありがとう」




と耳元で囁いてあげる。





『…変態。』



ソラはぶっきらぼうに言う。



その事で感謝したんじゃねぇよ。




俺は雨で濡れたソラの髪を撫でた。



彼女はその時、


俺の緊急要請に応じて


学校から傘をささずに走ってきてくれたんだ。




その日は大雨で


ずぶ濡れだった彼女を見て


「傘は?」


と聞くと



『教室に忘れてきちゃった♪』



と微笑んだ。




そんな愛くるしさが


大好きだった。







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