そのコップは空(ソラ)だった。
「市川悟(イチカワサトル)と杉浦佑香(スギウラユウカ)が
付き合っているってウワサ。」
「あ?」
俺と誰が付き合っているって??
女はもぉ~!分かれよ~!と怒りだす。
「あんたとあたしが付き合っているってガセネタだよ。」
・・・・・・
「ふざけんな」
「あたしに言うなよ。」
「お前がストーカーするのが悪いんだろ。」
「あたしはたまたまいた奴に話しかけているだけ。」
「それが原因なんだろ。」
「しょーがないじゃん、性格なんだから。」
「その性格直せよ。」
「"直せ"と言われてすぐに直るんだったら
いくらだって性格変換できる。」
「そういう頑固な性格だから
変な噂を流されるんだよ。」
「それはあんたも同じでしょ。」
こいつと話しているとだんだん腹が立ってくる。
杉浦はアップルパイを大きな口を開けてかじる。
「なぁ、どうしてくれるんだよ。
なんで俺がお前と付き合わなきゃなんないんだよ。」
「ごめんねぇ~、イケメン君のプライド傷つけちゃって。
でも、これじゃあただのタラシだねぇ~。」
そう言って豪快に笑う。
なんとも女に見えない笑い方。
こんな奴が俺の彼女なのかよ。
でも、姿は女子高生だ。
スッピンだけど
スタイルは良いし
顔立ちも良い。
そのまま立っているだけなら良い女だ。
「まったくしょうがねぇなぁ~。」
俺は杉浦の手に持っている
さっきまでアップルパイが入った紙くずを見て言った。
「とりあえず、
アップルパイもぅ1個おごってやるよ。」
俺と杉浦はウワサ通り付き合う事になった。