そのコップは空(ソラ)だった。
「いや、俺さ、風紀委員って一人だと思ってたから
会議出なくてもさっちゃん(斉藤担任)が仕事内容の紙でも渡してくれるかと思ってさぁ。
もしかして、一人で会議行かせちゃった?」
首を傾けて問う黒住くんに私はコクリとうなずいた。
すると、哀れむように顔をゆがめる。
「ごめんよー。さびしい思いさせちゃったねぇ…。」
「あっ…いえ!大丈夫ですっ!」
「今度からちゃんと会議に出席するようにするから。」
「あっ…はい…。」
私…今、憧れの彼と普通に会話している。
嬉しいことだけどきっと彼にとってこれが普通なんだろうな…。
これでも今日、彼と喋ったのが初めてなんだから…。
「SHRを始める。まず各委員会から連絡がある奴は挙手を。」
私は控えめに手を挙げた。
「風紀委員からだな。」
「はい…。」
私はさっきとは違うガチガチに固まった体で立ち上がる。