そのコップは空(ソラ)だった。
「えっと…昨日の風紀委員会会議で決まった内容なんですが…」
普通だったらアドリブで言うこのセリフも私の紙には鉛筆書きされている。
「まず…今年度の学校の生活目標が…"規律ある生活は身なりから"という…目標に決まりました。」
周りは物思いに騒いでいて私の話を聞こうとしない。
私はそれで助かっている。
だって声が小さいから聞こえないっていうのではなく周りがうるさいから聞こえないってことに出来るのだから。
「最近では…校具等の破損が多く見られます。また盗難も多いです。
学校のものは…大切に使い…また人のものは無断で使わず…個人個人の所有物には…責任を持ちましょう。」
"責任"
こんな言葉、この学校ではキレイ事にすぎない。
みんな無責任すぎる…。
私の番が終わり、今度は黒住くんが立ちあがる。
「えーっと…登校・下校の服装はもちろん学校内での服装は本校指定の制服を着用し、常に清潔・端正にし品位を失わないようにしましょう。また、頭髪面でも常に清潔を保ちましょう。最後に教職員及び目上の人に対しては、親愛の仲にも礼儀正しい気品を保つように努めましょう。」
机に片方の手を置き前のめりでもう片っぽの手に持つ紙を私とは比べ物にならない速さで読む黒住くん。
私…人前でスピーチするの苦手だから家で何回も練習してきたのに…。