時 空 堂
時空堂
――コンコン
「おーい。刹那(セツナ)ーっ、クローっ、開けてくれよ」
壊れそうな扉を少し遠慮がちに何度か叩いた。開いていたり開いていなかったり自由な扉。
「潤(ジュン)・・・、どうぞ入って」
カチャっという音と共に女の声がし俺は中に入る。
「よう、刹那」
ふわっと、ほんのり甘い香りが漂う。部屋の中は薄暗く、真ん中に木の丸いテーブルと椅子があるだけ。奥にも部屋があるようだが、いつも真っ暗でわからない。
「時空堂へようこそ。今日はどちらかに行く?」
女はニコッと笑いながら言った。
「いや、行かない」
つられて俺も笑いながら返事をした。
この店は不思議な店だ。
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