時 空 堂
時空堂

――コンコン


「おーい。刹那(セツナ)ーっ、クローっ、開けてくれよ」

 壊れそうな扉を少し遠慮がちに何度か叩いた。開いていたり開いていなかったり自由な扉。


「潤(ジュン)・・・、どうぞ入って」

 カチャっという音と共に女の声がし俺は中に入る。

「よう、刹那」

 ふわっと、ほんのり甘い香りが漂う。部屋の中は薄暗く、真ん中に木の丸いテーブルと椅子があるだけ。奥にも部屋があるようだが、いつも真っ暗でわからない。

「時空堂へようこそ。今日はどちらかに行く?」

 女はニコッと笑いながら言った。

「いや、行かない」

 つられて俺も笑いながら返事をした。

 この店は不思議な店だ。
< 1 / 426 >

この作品をシェア

pagetop