時 空 堂

 どれくらいの時間が経ったのだろうか。外からガサガサと、草を踏む足音が聞こえた。

ガタッ

 一筋の光が辺りを照らした。懐中電灯のようだ。その光が俺を捕えた。

「うぉっ」

 光の持ち主は、息を潜めていた俺に驚いていた。懐中電灯の明かりしかないため、顔がわからない。

「く、黒河(クロカワ)か?」

 低い男の声だ。光と共に男はゆっくりと近寄ってきた。

「なんだ黒河か。驚かすなよ」

 そう言いながら、男は自分の顔を懐中電灯で照らす。

「俺だよ。桜田だ」

「あぁ、お前だったか」

「すぐに塚本(ツカモト)も来る」

「・・・そうか」

 再び畳へと目をやった。
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