時 空 堂

「――龍(リュウ)っ」

 私は脳裏によぎった男の名前を叫びながら、目を覚ました。

 目の前には写真に写っていた男、龍が居た。

「薫・・・、どうした?大丈夫か?玄関に倒れていたけど」

「えっ、あぁあの、その」

 突然目の前に龍が居た為、戸惑い焦った。

「き、気分が悪くなっちゃって、そのまま意識がなくなっちゃったみたいで」

 嘘は言っていない。

「大丈夫か?晩御飯俺が作るよ」

 そう言いながら龍はスーツのボタンを外し、ネクタイを緩めながら、台所へと向かった。

 私は隣接する部屋のベッドに寝かされていた。龍が運んだんだろう。
< 16 / 426 >

この作品をシェア

pagetop