時 空 堂

 うん。ここがおかしい。

「未来になんて、行けるはずないじゃん」

 私は思わず呟いた。

「ん?薫、何か言った?」

 鍋に火をかけながら、龍はこっちに目を向けた。

「ううん。なんでもない。手伝おうか?」

「いいよ。体調悪そうだし、お粥作ってっから、待ってて」

「ありがとう」

 えっと、どこまで整理した?

 そうだ。この部屋に来たんだ。新聞紙と自分を鏡で見て、私は未来に来たとわかった。そう思いたくない気持ちもあるけど。

 来たのはいいが、あの店からの記憶がない。

 だからここがどこかも分からないし、龍だともわからなかった。

 あれ?私なんで龍って名前分かったんだっけ?

 そうか、あの女っ。
< 18 / 426 >

この作品をシェア

pagetop