時 空 堂

「かしこまりました。それではよろしいですか?」

 こくんと頷くと、女はスゥっと人差し指を私に向けた。

「あっ、ちょっと待って」

 指先だけをびくっとし、女の動きが止まった。

「何か?」

 女は少し眉間にシワを寄せ、不機嫌そうに着物の袖元で口元を隠した。女の眉間とは裏腹にシワひとつない着物。

「あのさ、一度記憶が入りかけたのに、入らなかったんだけど何で?そんなことってあるの?普通なこと?」

「・・・あぁ」

 少し間が空いてから、女は何か思い付いたように頷いた。
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