時 空 堂

「それはあなたが見たくない記憶」

「見たくない記憶?」

「あなたが忘れたい過去ということよ」

「え・・・っ」

「どうする?今なら辞めれるけど」

 女はそっと袖元をおろし、真っ正面から私を見た。

 冷たく、そして少し淋しげだった。


「いい。過去に戻ったところでいいことなんてないから」

「では」

 スウッと人差し指を私に向けた、その瞬間だった。

 激しい頭痛、胸から込み上げてくる不快感。息がまともに出来ない。

「っはぁ、ぁあ」

 歪んでいく視界、その中で最後に目に入ったのは、あの女の悲しそうな顔だった。

「逝ってらっしゃい」
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