時 空 堂

「痛い?なぁ、痛いか?大丈夫か?」

 微笑んだ龍は私を優しく包み、叩いた頬を摩る。思わず肩が強ばった。

「もう平気」

 本当はまだ痛い。ヒリヒリする。でも痛いなんて言ったらきっとまた機嫌を損ねるだろう。そうすればまた私を叩くだろう。そう思っていたから私は口にしなかった。

「薫見てるとうらやましいよ。家に居て気楽だよなぁ。社会のストレスなんて無縁だもんなぁ」

 いつもこう言っていた。

 いろんな出来事が脳裏に焼き付いてきている。

 結婚してから私はきっと、龍のストレス発散に使われていたんだろう。
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