時 空 堂

 なんで倒れたんだろう。記憶がはっきりしない。時空堂から出て、なんとか家に帰ったんだろうけど・・・。

 時空堂・・・。刹那。

 助けたい。でも俺が近付くと刹那は消えてしまう。どうすれば・・・。

「潤さん」

「ん?」

「何を探していたんですか?」

「・・・思い出、かな」

「・・・そうですか」

 榊さんはそれ以上何も問いかけなかった。でも何かを考えるように、眉を少し顰めていた。

 再びゆっくりと立ち上がり、本棚に近付く。アルバムや小説本等が乱雑に並んでいる。こんなに探さなくちゃいけないくらいなら、普段か続けておけば良かったと後悔した。榊さんにはここは触らないように言っていたから片付けられていない、俺のテリトリー。

「・・・私下の階に居ますね。その方が集中出来るでしょうから」

「何かあったらすぐ呼ぶよ」

「倒れないでくださいね」

「うん」
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