時 空 堂
ずっと外したままだったから、これがあるのを忘れていた。
でも刹那もあいつと同じように右耳に同じピアスを・・・。偶然なのか?それとも・・・。
俺の中にある一つの仮説が少し現実味を増した。
たったこれだけのことかもしれないけど、今の俺にはたったこれだけでも重要なことだった。
箱の中の物全てに目を通し、このピアスを再び自分の左耳につけ、欲しかったものをポケットに入れ、屋根裏部屋を出た。
シャワーを浴び、着替え、出かける準備をした。
「榊さん」
「はい」
俺を見て、少し驚いた顔をしたあと、にっこりと笑った。
「いってきます」
「気をつけて。いってらっしゃい」
「うん。・・・あ、榊さん何で俺の探し物分かったの?」
そう聞いても、榊さんはにこにこ笑っているだけだった。
「ふふっ、まぁいいや。行ってきます」
「はい」
見送ってくれる榊さんに背を向け、家を出た。