時 空 堂

 夕方の人混みをすり抜け、いつもの道を通る。

 この時間帯が嫌いだ。恭華の居なくなったこの時間帯を俺は好きになれない。

 足早に人を追い越しながら、いつもの場所に向かった。

 何もない空き地にひっそりと佇む、歪な形の針をした大きな時計がついた三角柱の屋根の建物。見えない人には見えない謎の建物。

 時空堂。

 今日が来るのは最後かもしれない。見納めるように建物をゆっくりと見上げる。

 何をどうしていいのか、イマイチ分からない。でも、話すしかない。

 刹那、ごめん。苦しい思いをさせるかもしれない。でも、離れたくないんだ。

 また明日って言いたいんだ。

 扉に手を掛け、ゆっくりと開いた。ぎぃぃっと音をたて扉が開いた。
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