時 空 堂
時空堂

 真っ暗な暗闇の部屋の中。シーンと静まり返り物音一つしなかった。

「・・・刹那?」

 伺うように問い掛けても返事はなく、自分の声だけが虚しく反響した。ゆっくりと一歩ずつ前に進む。

「刹那は居らぬぞ」

「クロッ」

 暗闇に紛れていたかのように、全く気配を表さず、俺の前に現れた。驚いて、咄嗟に後ろに後ずさった。

「何の用だ。来たら再びあのようなことが起こり得るぞ」

「刹那は?」

「仕事だ。今は居らぬ」

「そっか。それは都合がいい」

 そう言いながら、いつも座る席に座った。丸いテーブルに頬杖をつく。クロはじっとこっちを見ていた。

「クロ、ちょっと話そうよ」

 クロは何も言わず、テーブルの上にすっと飛び上がった。
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