時 空 堂
「それで?」
クロは話しの続きを言うよう促した。俺はそれに答えるように話した。
「俺の生きてきたこの二十数年で、幽霊になる可能性のある人はたった一人だけ」
そう、ただ一人。
「それがさっき話した女のことか?」
「そう。突然居なくなった恭華だよ」
クロは何の反応もしてくれなかった。ただ黙り、俯き加減に机をじっと見ていた。
しばらく沈黙が続いた。どちらからも話すことはなく、ただ黙ったままだった。
刹那はまだ帰ってこない。
長い長い静寂を破ったのは、クロの溜息だった。
「ふぅーっ」
小さく長い溜息だった。