時 空 堂
「何も知らない男の子は、訳も分からずただ泣いて泣いて、延々と泣き続けあたりをさ迷った。履き物はとうに壊れ、裸足で足裏が血まみれになりながら、痛みではなく、親に会えない哀しみでただただ泣いた。涙は枯れることを知らず、とめどなく溢れていた」
クロは先程とは反対に俯きながら、話していた。
「・・・それでその子はどうなったの?」
「死んだ。親がそうしたことによってな」
今なぜこの話をするのか、俺にはクロの意図がわからなかった。
「それからその子の魂は現世をさまよった。誰かに助けられることなく死んでいった無念な幼い魂は、いくばくも無いうちに憎悪に溢れかえった。そうだろう?さまよううちに、自分は捨てられたんだと、世の中を見て理解したのだから。同じように口減らしのために捨てられる幼い子どもや、老人たち。戦争により奪われる命、堕胎、心中、殺人。そんなことを目にしていくうちに、人間として生まれたことを後悔していった」
クロの顔は段々と苦痛に満ちていった。