時 空 堂

「だが俺のこの姿では何も出来なかった。招き入れても逃げられてしまうから。そこで力を与えてくれた動かなくなった入れ物に、俺のような哀れな魂を拾い、中に入れ、そやつを利用し、人間の末路を見ていくことにした」

 ハッとした。クロは気付いているんだろうか。いつの間にか「男の子」から「俺」と言っている。この話しはクロ自身の話しだ。

「・・・潤、貴様は人間をどう思う?」

 冷たく、重たい問い掛けだった。少し考え、クロに答えを返した。

「・・・とても・・・とても、愚かな生き物だと思うよ。いや・・・、ここに来ていて余計にそう思った。こんな訳の分からないところで過去か未来に行きたいと願うのだから」

「ほぅ」

「そんなこと願ったって、結末がいいとは限らない。それなら今に居るべきだ」

 クロはゆっくりと机の上を見た。
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