時 空 堂

「過去か未来を選択出来るのは、何故だと思う?」

 俺は少しだけ考え、首を左右に振った。

「・・・そうか」

 呟くようにクロは言ったあと、黙り込んだ。

 何を言っていいのか、俺は思いつかず、いい言葉が見当たらなかった。

「潤、何故おまえはここに留まる?何故この世界に固執する?」

「・・・固執しているつもりはないよ」

「ではどうしてその女を助けにいかない?」

「じゃあ、逆に聞くけど、クロはどうして戻らないの?」

 そう言うと、クロは耳をピクっと動かし、目を見開いた。

「きっと俺と同じ理由だよ。繰り返したくないんだ。もし、戻ってその事故を回避して、恭華が助かったとしても、もしかしたらまた同じようなことが起きるかもしれない。・・・怖いんだ。俺には戻る勇気がない。クロもそうなんだろう?」
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