時 空 堂

「ありがとう」

 クロに向かって頭を下げながら、小さく呟いた。

 いろいろな話しをしすぎて頭が痛い。現実からあまりにも掛け離れすぎて、俺の許容範囲を超えている。

 でも突然失った人ともう一度きちんと会えるなら、何としてでも、何をしてでもどうにかしたい。クロも同じ気持ちだったんではないだろうか。

 何の音もないこの空間に居た刹那は、どんな気持ちだったんだろうか。記憶のない自分は、どこの誰なのか不思議に思わなかったんだろうか。

 ・・・俺のことを少しでも思い出すことはなかったんだろうか。

 頭をくしゃくしゃっとしながら、テーブルに突っ伏した。

< 349 / 426 >

この作品をシェア

pagetop