時 空 堂

「分からない。ただ務めを果たしたいだけなのに、どうして余計な感情が沸くの?私はただ静かに見守るだけのはずなのに」

 頭を抱え、首を左右に振っている。着物の袖で表情が読み取れない。でも、苦しそうな声なのは分かった。

「刹那、落ち着いて」

 肩を抱こうとしたその時だった。

「触らないで」

 刹那は俺の腕を振り払いなから、椅子から立ち上がり、興奮気味に言った。

「頭が割れそう」

 そう呟いた刹那は肩で息をするように、上下に動かしていた。息が荒い。ゆっくりと床に座り込んだ。

「刹那、君は時空堂の店主だ。そして、俺の恋人だった。・・・生前ね」

 刹那は俺の方を見上げた。

「・・・私は生きてすらいないのね」
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