時 空 堂
馬鹿。そんな時期を迎える前にお前居なくなったじゃねぇか。思い出すのが辛くて、しまいこんだはずの記憶が、俺の体の中を駆け巡っている。目をギュッと瞑り、唇を噛み締めた。
「・・・っ」
俺の気持ちとは裏腹にテープは流れ続けている。
「んー、声もだけど今の身長体重とか言っとく?」
「なんか、もうちょっと考えてから録り始めたら良かったんじゃん」
「変声期の声なんて、もう聞けないかもしれないでしょー?」
・・・恭華っ。
「・・・潤、もう良い。分かった」
クロがレコーダーを止めるように促してきたのを聞いて、俺はすぐに止めた。
「刹那、少し席を外せ」
「・・・はい」
刹那はゆっくりと暗闇の部屋に入っていった。
「潤、負けたよ。いや、勝負ではないから、負けたというのは可笑しいな」
フッと笑った。
「恭華の声と同じと気付くとはな。少し驚いた」