時 空 堂

 その後、一瞬目の前が暗くなり、ぐにゃっと視界が歪んだ。明るくなった時には何処か知らない森の中に立っていた。

 目の前には見たことのない男女が居た。

「どうして?私のことがいらないの?」

 悲痛な面持ちで女は男を見ていた。

「そうじゃない。ただこのままだとあいつに殺されてしまう。それだけは、それだけは避けなくてはいけないんだ」

 男は怯えたように頭を抱えていた。

「じゃあ、逃げましょうよ?あんな人いらないんでしょう?ねぇ、ねぇってば」

 女は縋るように男の両腕を持ち、体を揺さぶったが、男は黙ったまま俯いていた。

「お願い、別れるなんて言わないで」

 悲痛な叫びに男は目をギュッと閉じ、手には力がこもっていた。
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