時 空 堂

「いや、な、なんでもない、なんでもないんだ」

 首を全力で左右に振っていた。

「よく聞こえなかったんだけど・・・。そんなつもりはないって言おうとしたの?こんな女をあなたは庇うの?あなたは私を裏切るの?ねぇ、ねぇ、ねぇってばっ」

 大きな声で叫び、髪の長い女はそのまま、座り込んでいた男の膝の上に乗った。
 がくがくと震える男を包み込むようにしていた。

「あなたは永遠に私だけのものよ?」

 手に持っていた刃物を大きく振り上げた。

「き、君、助けてくれ。お願いだ」

「それは無理よ。時空堂のご利用、ありがとうございました」

 また刹那の声。

 目を見開いたままの男に、髪の長い女は笑顔でそれを振り下ろした。
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