時 空 堂

 クロはなんだか嬉しそうな顔をした。

「・・・そうだな。その考えがなかったわけじゃない」

「だからここを続けているんだろう?」

「そう、だったの」

 刹那は納得したように、クロの方を見た。

「時空堂をなくしてしまうと、クロは出会うきっかけをなくしてしまう。きっと輪廻転生していても、クロなら両親だって見抜くんだろうからな」

「本当、おまえは人の気持ちを見抜くのが得意な奴だな」

 ハハっとクロは笑った。

「憎んでいたんじゃないの?」

 刹那はクロに問いかけた。

「憎んでいたさ。でもな、刹那。俺もやっぱり元は人間だ。一人で彷徨っていたらな、自分が捨てられて腹が立ったことよりも、会いたいが強くなったんだ。でも、自分から会いに行って、拒否されたら怖い。そう思ったら、俺は人間になれなかった」
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