時 空 堂

 クロの目には、涙がまだ溜まっていた。

「だから、クロも正直に生きなよ。クロは気持ちを隠しすぎてる。抱え込まなくていいじゃん。刹那が居るんだし、なんでも話したらいいんじゃないの?救ってあげたいような魂を拾ってくるなら、優しくしてあげなよ」

「・・・ふっ」

「俺、クロが人間だったら、いい友達になってたと思うけどね」

 にやっと笑うと、クロも笑った。目に溜まっていた涙がこぼれ落ちた。

「次に会うときは人間の姿しててよ」

「はっ、考えておこう。もう会うことはないだろうがな」

「いいよ、それならそれで。ここがなくなるときは、クロが前に進みだした時だろうからさ」

 色々聞きたかったけど、クロの涙を見て、もう何も聞けなかった。きっとあの涙は嘘じゃないだろうから。
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