時 空 堂

 刹那の前に少し離れて立つ。

 クロはテーブルの上から俺を見ていた。

「確認します」

 小さく深呼吸をし、刹那は俺の方をまっすぐ見た。俺もまっすぐ刹那を見た。

 綺麗な白髪。長いまつげ。鼻筋の通った高い鼻。人形のような顔に、色鮮やかな着物。お揃いの赤いピアス。もう見ることはないだろう刹那を、目に焼き付けた。

「一度しかいけません。構いませんか?」

 何度も聞いた言葉。俺に向けられるのは初めての言葉だ。

「あぁ。構わない」

「過去でよろしいですね」

「うん」

 刹那の腕がすぅっと俺の方に向いて伸びた。

「クロ、幸せになれよ」

 クロの方に顔を向けると、少し驚いた顔をしていた。もう会えなくなるのはちょっと寂しかった。

「では、いってらっしゃい」

 刹那の声が聞こえた時、「おまえもな」というクロの声が聞こえ、視界が歪んだ。
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