時 空 堂
目に映る限りの人を、一人一人見ていった。誰一人として見落とすことのないように、じっくりと。恭華を見つけるためには、この方法しかなかった。
「・・・恭華っ」
陸橋の手すりをぐっと力を込めて握った。
その時だった。
ポケットの中から、携帯の着信音が聞こえた。
目でまわりを見ながら、手探りで携帯の通話ボタンを押した。
「もしもし」
「もしもし?電話どうしたの?もう待ち合わせ着いたの?」
恭華の声だった。
懐かしい。胸が締め付けられそうだった。涙腺が緩む。でも、今は感傷に浸っている場合じゃない。
「恭華、今どこに居るんだ?」
「今?買い物してたから、駅の近くだよ。何?もう着いてるの?ごめんね、まわりがうるさくて電話気付かなくて」
「近くってどこだよ。そこに居てくれ。迎えに行くから」