時 空 堂

「え?どうしたの?」

「いいからっ」

「いや、いいよ。もうすぐ着くから、駅前に居て」

 ふと、近くにあった時計台を見た。

 あと五分で、事故のあった時間だ。

「詳しい場所を言ってくれ。早くっ」

「もうっ、何怒ってるの?」

「いいから、早くっ」

 気持ちだけが焦っていた。

「えーっと、今駅前のバス停のところらへん。ほら、なんかの石像があるところの反対側」

 そう言われて、すぐさま恭華の言った方向を見た。

 何人もの人が歩いている中、紙袋を持って、携帯で話している恭華を見つけた。

「居たっ」

「え、何?」

「そこに居てくれ」

 そう言って電話を切ったと同時に走り始めた。

 事故の時間まで、あと、三分ちょっと。
< 415 / 426 >

この作品をシェア

pagetop