時 空 堂

「そこに居て」

 やっと恭華を見つけた。俺の大事な彼女。近くの横断歩道から渡ろうと、そこに向かって歩いていると、恭華が先に、向こう側の横断歩道の目の前に立った。俺の行動を読んだんだろう。そこに居てって言ったのに。

 でも、会えたことで、嬉しくて口元が緩んでしまう。俺が横断歩道の、前に着く前に、信号が変わり、恭華が歩き始めた。

 恭華から目を離すことなく、俺は確実に恭華を捉えたままだった。

「うわ、あれ、危ないって」

「ちょっと」

「やばいやばい」

「キャーッ」

 少し向こうから、悲鳴や騒ぎ声が聞こえて、振り返った。

 逆走する車がこっちに向かって来る。ちょうど車の向かう方向に恭華が居る。やばい。


「恭華、走れっ」 
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