時 空 堂

「え?」

 恭華が俺の声に反応して、顔を上げた瞬間、車に気がついたようだった。びっくりして、体が固まっている。

「くそっ」

 間に合うか。いや、間に合わせるんだ。

 前に居た人を押しのけ、車道に飛び出し、恭華に向かってまっすぐ走った。

「ストップ、ストップ」

「待てって」

「おいっ、危ないよ」

 そんな声が聞こえた。

 俺に向けられたものなのか、横断歩道に居る、恭華を含めた何人かに向けたものなのかは分からない。でも、俺には関係ない。

 車が来るよりも先に恭華を助けないと。

 恭華まであと二メートル。

 車がすぐそこにまで来ているのが横目で分かった。

 手を伸ばし、何としてでも恭華を捉えようとした。

「もう少しよ、潤」

 刹那の声が聞こえた気がした。
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