時 空 堂

 こんな夢みたいなこと、きっと誰も信じない。

 だってそうだろう?物語のはじめは、猫が人間の言葉を話すところから始まるんだ。誰だって信じないさ。

 でも、俺は忘れない。どんなに歳をとったって忘れるもんか。

 だからクロ。クロも両親のことを忘れるな。どんな親でも、クロの両親だ。

 会いたいと願い続けているクロの気持ちは、きっといつか救われるはずだ。

 早くクロと両親が会えますように。クロの気持ちが少しでも楽になりますように。

 そして、クロが幸せを感じる日が来ますように。

 ・・・さっき、クロが体の向きを変え、歩き始めた時にこう呟いていた。

「また、探しに行くとしようかのう」

 刹那を、・・・中身の魂を探しに行ったんだろう。

 どうか、次の刹那となる人よ、クロを一人にしないでくれ。そして願わくば救ってやってくれ。
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