時 空 堂

 扉を開けようとしたその時だった。

「潤」

「ん?どうした?」

 刹那に呼び止められ、扉に手をかけたまま俺は振り返った。

「絶対に、絶対に潤だけは、この時空堂を・・・、未来にも過去にも行っては駄目よ。利用しては駄目」

 顔面蒼白な刹那は、ゆっくりと、そして真っすぐに俺に向かって言った。

 何故急にこんなことを言ったのか、刹那の心理はわからない。

 でも力強い、何かを想う声だった。

 俺は真剣な刹那を見て
「もちろん使わない」
そう言うしかなかった。
< 50 / 426 >

この作品をシェア

pagetop