時 空 堂

「そうだよ。なんだ?もう忘れたのか?」

 父親は庭の片隅にある倉庫へ行きながら、俺に話し掛けてくる。

「野球したいって言い出した時、正直びっくりしたんだよなぁ」

「そうなの?」

 あぁと言いながら、父親は倉庫を開ける。

「外で遊ぶような子供じゃなかったしな、おまえは」

「・・・うん。そうだね」

 確かに俺は静かに、一人でいることを好んでいた。本を読んだり、テレビを見たり、太陽の下にいることはあまりなかった。まぁ、今も一人は好きだけど。
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