時 空 堂

「ほらっ」

 父親はポンっと、俺に向かってグローブを投げてきた。俺はそれを上手くキャッチする。手に乗った冷たい少し硬くなったグローブ。

 久しぶりに触る感触が、懐かしくて、少し寂しかった。

「つーか、大人用のグローブって一つしかないよね?もう一つは俺の子供の時の小さいグローブしかないはずだし」

 父親にキャッチボールをせがんでいたのなんて、小学校くらいのはずだ。

「ちっちっちっ」

 父親は人差し指を立て、左右に振りながら俺を見た。若干苛つかせる行動だったが、あえて何も言わない。
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