時 空 堂
「女の子?」
「小学校くらいだったかな?女の子も一緒にしてたんだよ。確か、潤の小学校にも女の子で野球してる子いたじゃないか」
「いたっけ?あー、そういえば居たような気もする」
「いたわよ。潤の学校に居たのは、確か名前は恭華(キョウカ)ちゃんだったかな?あっ」
母さんは急に口を抑えた。
「どうしたの?」
「ううん。ご飯食べよっか」
首を左右に振ったあと、笑顔でこっちを見た。
「ふーん」
そんなこともあった気がする。・・・いや、あった。
心の奥に仕舞い込もうとしていたものが、また浮き上がってきた。忘れられない記憶が、落とした墨のように、俺の心に染み付き始めた。