なついろ

教室に戻ると
がやがやしていた
「サボり野郎が」
「違うの,斉藤に捕まったんだよ」
「いいから早く着替えろって」
次の時間は体育
俺たちも何度もグラウンドを走るのか
そう思うと気が重くなった。
ジャージに着替えて拓海とグラウンドに出ると
太陽がぎらぎらと輝いていた
「嘘だろ・・」
腕まくりをして走り出す
「あー,かったるい」
そう言ってだるそうに走っている拓海

4周目に入ると
もう息切れが始まった
ついこの間部活を退部したばかりなのに
もう息切れとか・・
俺ってそんなに体なまってるのかな??
「俺限界かも」
「早すぎだろ,帰宅部の俺が余裕なんだぞ?」
「そう言いながらもはぁはぁ言ってんじゃねぇかよ」

日陰にばたんと同時に倒れこんだ

「あー,きついわ」
「もうギブ」
二人の息遣いと木が風に
ゆられる音だけが聞こえていた

フェンスに手をかけて
ぐいっと体を起き上がらせたとき
目の前にプールが見えた
水のしずくの音だけで涼しくなる
そして・・女子の水着!!
「うわー」
ゆっくり拓海も起き上がる
「女子はプールか,いいよな」
「羨ましいよ」
フェンスに這い蹲る状態で
俺たちはプールを眺めていた

プールの端の方で
水のかけあいをしている女子
楽しそうに綺麗な水の雫が飛び交う
キラキラと輝く水面
「あ」
「あ?」

―美夏だ
さっきから楽しそうに
可憐に水のかけあいをして遊んでいた
女子の一人は美夏だった
綺麗な白い肌
綺麗な細い腕

「夏はこれからだな」
そう言って不敵な笑みを浮かべた拓海

俺はぎゅっと目をつぶった


「俺の夏復活っ」




小さくガッツポーズをした

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