なついろ
外靴に履き替えるとき
急に大声を上げた拓海。
「な,なに・・」
「やべぇ」
「何が」
「携帯忘れた」
「バカじゃねぇの?」
「取って来る」
そう言って走っていった拓海。
俺は拓海の後ろ姿が
見えなくなるまで眺めていた。
そしてトボトボと歩き始めた。
暑くて仕方ない。
ブラウスを腕まくりして真上を見た。
太陽がギラギラと見下している。
「暑ちぃ」
グラウンドの隣に大きな木があって
いつもそこの日陰で休んでたっけ?
グラウンドを見ると野球ボールが転がっていた。
「ちゃんと片付けろよ」
ボールを握り締める。
バックを地面に叩き付ける。
ボールを見つめていると
夏の匂いがした。
おもいっきりボールを投げる。
跳ね返ったボールはすがりつくように
俺の足元に戻ってきた。
「野球か」
バックを拾い下駄箱に戻る。
下駄箱のところに誰か立っていた。
拓海か?
でもスカートはいてるし。
ずっと野球に集中していて
女子となんか思い出はない。