なついろ
「野球好きなんだね」
そう言って微笑みかけてきたこの女は・・
「そういうわけじゃないけど」
「朝練とか早いでしょ,大変だよね」
「いや」
「でも野球好きならそんなのへっちゃらか」
「辞めたんだ」
彼女の笑顔が徐所に消えていくのが分かった。
言いづらいな
「残念だね」
そう小声でぽつりと言った彼女。
夏の匂いと共に風が吹いた。
「祐也ー」
「あ?あぁ・・携帯あった?」
「おう」
俺の真向かいにいる彼女に気付いて
固まった拓海。彼女と目があって軽く礼をした。
「じゃぁ」
そう言って彼女は俺たちに背中を向けた。
一体彼女は?
「誰」
「さぁ」
「さぁって」
そう言って苦笑いする拓海。
俺たちはのろのろと歩き出した。