なついろ
「家ここらへんなんですか?」
「あー,うん」
小さな舌を出しぺロッとアイスを舐める彼女。
そんな姿をじっと見つめていて顔が真っ赤になった。
「親は?」
「今日は2人とも仕事だから」
そう言ってニコッと笑って顔の近くまで
袋を持ち上げた。
「同じ学年?」
「うん,何組?」
「2-C」
「私,2-B」
「隣か」
「うん」
ぱくぱくとアイスを頬張る自分。
暑かったせいもあるけど
女子と話すのも久しぶりで何だか緊張する。
「・・食べるの早いね」
「え?あぁ・・うん」
「ねぇ一つ聞いてもいい?」
「うん」
「どうして野球辞めたの?」
真っ直ぐな瞳で聞かれて
息も出来ないほど緊張した。
声が出ない。
深呼吸をする。
「俺の責任だから」
「責任?」
「いや,ただの逃げかもしれない」
「そう・・」
「もう俺の夏は終わりだよ」
そう言ってアイスの棒をバキッと折る。
「そうかな?」
横を見る。
丁度髪を耳にかけるところだった。
スローモーションにそのしぐさが見えた。
「まだ夏は終わってないよ」
一瞬時が止まった気がした。
あっさり素直に発言した彼女は・・。
「野球の夏は終わったかもしれないけど・・
でもまだ楽しいことたくさん残ってるでしょ?」
そう言って嬉しそうに微笑んだ・・彼女は。
「うん」
あっさり返事した俺に
納得がいったのかこくッと頷いた彼女。