先生にキス〈3〉
「あの時、俺が本当に何も見てなかったと思ってたの?」
口の端を吊り上げるようにして笑う並木君は、今まで私が見て来た並木君の爽やかなイメージは、どこにもなくて悪意すら感じてしまう。
嫌な予感で胸がザワザワする…。
あの日の光景がパッと頭の中に浮かぶ。
「俺、見ちゃったんだよね。教室で和丘さんが綾月先生と一緒にいるところ。あれって、どう見ても先生と生徒っていう関係には見えなかったんだよなぁ…。」
並木君の言葉に私は声がすぐに出て来ない。
いつ、私たちのこと見てたんだろう…。
今の口振りだと、かなりハッキリと見ていた感じだし…。
私、全然気付かなかった…。