先生にキス〈3〉
「並木君…?」



私が呼び掛けるのも気に留めず、並木君はホテルの裏の方へ歩いていく。



次第に人の気配もなくなり、私たちの歩く靴の音しかしないほど周りは静かだ。


空も暗くなり、辺りもホテルを照らす淡く白いライト以外に明るい光は見当たらない。



こんなホテルの裏まで来て…なんなの…?



並木君は、大きな木の前まで来ると、ピタッと歩く足を止めた。



「ここまで来れば誰もいないし、ちょうどいいよね。」



並木君はホテルの柱と柱の間の壁に私を追い込むと、前の体育館裏に呼び出した時のように、壁に両手をついて私を閉じ込めた。



「明日までって話にしてあるけどさ、もう和丘さんの中で答えは出てるんでしょ?ちょっと早いけど、教えてくんない?」



並木君の表情が、さっきまでの爽やかなものから一変する。



ニヤッと口の端を吊り上げて笑う…悪意を感じる表情…。



< 288 / 340 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop