先生にキス〈3〉
“何もないです”



本当はそう言いたかった。

だけど、この状況でそんな言葉を言えるわけがない…。



「昨日今日の話じゃないんだろ?俺にちゃんと事情を聞かせて…。」



先生の絞りだすような声が私の胸に貫くような痛みを感じさせる。



私は重い口を開いて、これまでの経緯を先生に話した。



並木君に放課後の教室で私と先生が一緒にいるところを目撃されたこと、そのことを黙っている代わりに並木君の彼女になる条件を突き付けられたこと、そして…



私がその条件を受け入れたこと…。



何度も言葉に仕えて途切れ途切れになる話を、先生は黙って聞いていた。




「……ごめんなさい。」



私は片手で制服のスカートの裾をキュッと握りしめる。



今にも涙が零れそうで、私はグッとこらえた。



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